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2011年3月1日火曜日

	
 今日、三月一日は芥川龍之介の誕生日です。
 一八九二年三月一日、辰年辰月辰日辰刻に生まれたので、龍之介と名付けられたそうです。芥川龍之介の出生には複雑な家庭の事情が絡みますが、何だかゴシップ記事のようなので、ここでは省きましょう。
 芥川龍之介といえば、「羅生門」が有名ではないでしょうか。教科書で読んだ方も多いはずです。黒澤明の同名の映画もあります。話の筋としては同じく芥川の書いた「藪の中」と併せたものですが。「蜘蛛の糸」や「杜子春」などの童話も教科書で読んだことがあるかも知れません。
 教科書で読む小説というのは、大概、面白くありません。教科書に載る小説が面白くない、というわけではありません(本当に面白くない小説が載っていることも多々ありますが……)。あのくだらない授業がおそろしくつまらないものにしているとしか考えられません。定められた読み方を強要されて面白いわけがない。まあ、授業なんて大抵つまらないものですが……。
 そんな学校で習う芥川龍之介から離れて、一人の作家として芥川龍之介の小説を読んでみると、違った趣を感じるかも知れません。


 文章の中にある言葉は辞書の中にある時よりも美しさを加へてゐなければならぬ。

              ――「侏儒の言葉」

  芥川はそんな言葉を残しています。同輩に、あまり文に凝りすぎるな、と忠告を受けたこともあるそうです。が、芥川自身は必要以上に文に凝っているつもりはない、と書いています。芥川の文体は、初期の頃と晩年ではだいぶ違うものですが、おそらく文章に対する姿勢は一貫したものであったことでしょう。彼は短文を基調に、うつくしく整った文を書きました。初期は様々な装飾を凝らしながら、晩年は簡潔に言葉を研ぎ澄ましながら。芥川の文章は密度が濃いもので、書き飛ばしているような文はほとんどありません。彼が長編小説をものにできなかったのも頷けます。
 現代の小説にはあまり見ることのできない、その美しい言葉を、芥川龍之介を通じて読んでみてはどうでしょうか。

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