葬列は続いていた。 一瞬刹那の自分の列。過去の僕はその直前の過去の僕を、それぞれ弔っている。 その列の全て、過去の自分。一度は確かに僕自身だった筈なのに、みんな他人のように遠い記憶。 闇の中、死人の顔をした僕の過去が一列に延々と続いている。うつむきがちに、皆 互いに聯関 の無い顔をして、真直な列を乱しはしない。僕は最後尾に立ち、次々と生まれては死の列に加わる僕自身の背をみつめる。 彼らは僕を憎んでいるだろう。無為の生活の中に埋もれながら、もがこうともしない僕を。他人ばかりか自分をも偽り、信じもできない理由をつけては己を正当化しようとしている僕を。自らを卑下し苦しみ続ければ、やがて免罪符が与えられると願っているような僕を。 ――しかし、彼らは振り向きもせずに過去の自分に小さな白い花を添える。涙ひとつ流すでもなく、声ひとつ洩らすでもなく、それがまるで宿命のように自身の過去に頭 を垂れる。 僕の順番はやってこない。こうしている間にも、僕は一瞬いっしゅん過去になっていく。 ――闇の中に何かが閃いた。 と思った瞬間、僕は口からごぼりと血を吐いた。胸からも鮮血が溢れていた。右手を傷口にねじ込み、僕を傷つけたものを探る。それは銀の弾丸だった。 僕は膝折れ再び血を吐いた。 過去の僕は一斉に振り返る。その眼はどれも冷たい光を湛えていた。まるで手の中の弾丸のように――
2011年2月24日木曜日
「弾丸」
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